クリニックBLOG

2025.04.29更新

今回は、貧血の中で最も頻度の高い鉄欠乏性貧血についてご紹介します。

赤血球には、酸素を全身に運ぶ役割を持つヘモグロビンという赤い色素タンパク質が
含まれています。このヘモグロビンは、「鉄を含むヘム」と「グロビン」というタンパク質
から構成されています。そのため、鉄が不足するとヘモグロビンが十分に作られず、
貧血を引き起こします。

日本における貧血の現状

貧血の診断は血液中のヘモグロビン(Hb)値を基準に行われ、Hb 12g/dL未満を貧血
と定義します。日本人女性の約21.7%(5人に1人)が貧血とされ、推定患者数は約
1,000万人にのぼります。その大部分が鉄欠乏性貧血、または潜在性鉄欠乏です。
厚生労働省「国民健康・栄養調査報告(2019年)」によれば、30〜40代の女性の
10〜20%に貧血がみられ、男女とも70歳以上で増加する傾向にあります。
WHO(世界保健機関)では、貧血の頻度について以下のように公衆衛生上の指標を
定めています。
 4.9%以下:正常
 5.0~19.9%:軽度の問題
 20.0~39.9%:中等度の問題
 40%以上:重度の問題
先進国における貧血の平均頻度は、15~59歳の男性で4.3%、女性で10.3%です。対
して日本女性の貧血頻度はこれより高く、「軽度~中等度の公衆衛生上の問題あり」
に該当します。他の先進国と比較して日本女性の貧血が多い背景には鉄分添加食
品の普及状況が関係していると考えられます。たとえば、欧米では小麦粉に鉄を添加
する国があり、フィリピンでは米に鉄を添加する取り組みが行われています。

鉄欠乏の原因

成人の体内には5~7gの鉄が存在し、その70%は赤血球に、残りは肝臓や脾臓など
に貯蔵されています。通常、食事から吸収される鉄は約1mg/日で、腸管粘膜や皮膚
細胞の剥離、汗などによる自然排泄も同量(1mg/日)ありバランスが保たれています

鉄欠乏は、次のいずれか、または両方によって引き起こされます。
 摂取量の低下(例:鉄分不足の食事)
 排泄量の増加(例:出血)

主な原因は以下の通りです。
 生理(女性の場合)
 消化管出血(胃潰瘍、大腸ポリープ、大腸癌など)
 自己免疫性萎縮性胃炎
 ヘリコバクター・ピロリ感染
 PPI(プロトンポンプ阻害薬)やH2ブロッカーの長期使用
 胃・十二指腸切除後
 セリアック病(グルテン不耐症。日本では稀)
 慢性炎症(関節リウマチ、炎症性腸疾患、慢性感染症、慢性心不全、悪性腫
瘍などによるIL-6依存性ヘプシジン過剰)
 遺伝性の鉄代謝異常(例:TMPRSS6遺伝子異常)

また、世代によっても原因は異なります。
 幼児期:未熟児、偏った食事
 思春期:急速な成長、偏食、月経開始
 成人:病的出血、胃切除、低・無酸症、月経異常、妊娠・出産・授乳
 高齢者:食事摂取不良(入れ歯、咀嚼力低下)、消化管出血

鉄欠乏性貧血の治療

治療の基本は経口鉄剤の投与です。ヘモグロビンが正常化した後も体内の鉄貯蔵を
回復させるため、さらに3~6ヶ月間の治療継続が推奨されます。
 鉄の最大投与量は1日あたり鉄分200mgですが、100mgでも十分な効果が得
られます。
 空腹時の方が吸収率は高いものの胃腸症状(吐き気、腹痛)が出やすいため
、食後の服用も認められます。
 お茶やコーヒーのタンニンは鉄の吸収を妨げますが、治療効果に大きな支障
はないため特別な制限は必要ありません。
 ビタミンCは鉄の吸収を30%促進しますが、胃腸症状も強く出る場合がありま
す。

鉄剤の種類
 経口薬
クエン酸第一鉄ナトリウム、硫酸鉄、ピロリン酸第二鉄、クエン酸第二鉄など。
ピロリン酸第二鉄は小児用のシロップ製剤もあります。
※かつて胃腸症状が少ないとされたフマル酸第一鉄もありましたが、現在は
製造中止されています。
 静注薬
含糖酸化鉄、カルボキシマルトース第二鉄、デルイソマルトース第二鉄。
特に後者2つは比較的新しく、1回の投与で大量の鉄分補給が可能です。ただ
し、鉄過剰にならないよう慎重に投与量を管理する必要があります。

治療法の選択は、鉄欠乏の原因、胃腸の状態、副作用の有無などを考慮して行われ
ます。

鉄は赤血球のみならず、すべての細胞にとって生命維持に欠かせない元素です。鉄
不足を指摘された場合は、放置せず原因を調べ、適切な治療を受けることが重要で
す。

参考文献
 健康・栄養情報研究会 編:国民栄養の現状、平成15年度厚生労働省国民栄
養調査報告、第一出版、東京、2006年
 WHO. World Health Organization. Worldwide Prevalence of Anaemia
1993–2005: WHO Global Database on Anaemia
 日本鉄バイオサイエンス学会:鉄欠乏性貧血の診断指針(2024年)

2025年5月
内科・血液内科 久武純一

投稿者: なかじまクリニック

2025.04.15更新

 いつもいびきが大きいと指摘される、息が止まっていると指摘される。疲れがとれない。血圧が上がってきた。

そのようなことがあれば一度睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてください。

放置すると事故を起こすだけでなく、心臓に負担がかかるため命のかかわる病気になることも。

器械をつけて一晩、簡単な検査です。器械の貸し出しには限りがあるので事前に連絡いただけると嬉しいです。

痩せているかたも実は無呼吸の人は多いです。昼間眠い方、集中力が続かない方(子どもも)はおすすめします。

投稿者: なかじまクリニック

2025.04.04更新

スギ花粉症にお悩みの方にとって、舌下免疫療法(SLIT)は、症状を和らげ、花粉症の体質を改善することを目指せる治療法の一つです。スギ花粉症の治療には「スギ花粉エキス」を使用しますが、始められる時期に制限があります。

 

関東地方のスギ花粉の時期と治療開始のタイミング


関東地方では、スギ花粉は1月から5月にかけて飛び始め、特に2月中旬から4月上旬にかけて多く飛散します(日本花粉学会会誌2020:65(2):55-66)。


舌下免疫療法は、花粉が飛んでいる時期に始めると、アレルギー症状が強く出る可能性があります。そのため、スギ花粉エキスによる治療は花粉が飛んでいない6月~11月に開始する必要があります。

 

当院での治療対象について


当院では中学生以上の方を対象に、スギ花粉エキスを使った舌下免疫療法を行っています。治療を希望される方は、適応条件について医師と相談のうえ、治療開始のタイミングを決めることをおすすめします。

 

治療を検討されている方へ


3~5年間続けることが推奨されている治療法で、長く続けることで症状の軽減や体質改善が期待できます。

開始前にスギ花粉症の診断(血液検査など)を受ける必要があります。

初回使用時はクリニックで服用して頂き、アナフィラキシーなどの副作用がないか30分程度の経過観察を行います。

毎日服用することが重要で、途中でやめると十分な効果が得られません。

 

まとめ


スギ花粉エキスによる舌下免疫療法を始めるなら、6月~11月の花粉が飛んでいない時期が適しています。

関東地方にお住まいの方は、スギ花粉が落ち着く6月頃からの治療開始を計画するのがおすすめです。


当院では中学生以上の方を対象に治療を行っています。

スギ花粉症の舌下免疫療法をお考えの方は当クリニックまでご相談ください。

 

なかじまクリニック和 内科

投稿者: なかじまクリニック

2025.03.28更新

帯状疱疹ワクチンについて知っておきたいこと


こんにちは。なかじまクリニック和です。 今回は「帯状疱疹ワクチン」について詳しく解説します。2025年4月から接種費用の助成制度が始まるため、この機会にぜひご検討ください。


1. 帯状疱疹とは?

帯状疱疹は、水ぼうそうの原因ウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が再活性化することで発症します。 特徴的な症状は、体の片側に現れる「ピリピリとした痛みを伴う発疹」です。


こんなに多い!帯状疱疹のリスク

· 80歳までに3人に1人が発症

· 50歳以上の患者の5人に1人が「帯状疱疹後神経痛(PHN)」に (PHNは、激しい痛みが長期間続く合併症です)

注意が必要な方

高血圧・糖尿病・腎不全・関節リウマチ・がんなどの基礎疾患がある方は、発症リスクが高まります。


2. 帯状疱疹ワクチンの種類

当院で接種可能なワクチンは2種類です。


・アジュバント配合不活化組み換えワクチン


・乾燥弱毒生ワクチン

 

組み換えワクチンは50歳以上、または帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の帯状疱疹予防に適応があります。

生ワクチンは水痘の予防、50歳以上の者に対する帯状疱疹予防に適応があります。

3. 効果比較


不活化組み換えワクチンの帯状疱疹予防効果は、50歳以上で約97%、70歳以上で約90%です。約10年後も89%の効果が持続していました。PHN予防効果は100%でした。


弱毒生ワクチンの帯状疱疹予防効果は50〜60%です。7年後の効果持続は約60%でした。PHN予防効果は約60〜70%でした。

 

組み換えワクチンは高効果ですが、生ワクチンは費用が抑えられます。 ご自身の健康状態や予算に合わせて選択しましょう。


4. 接種スケジュール

· 組み換えワクチン:2回接種(2か月間隔)

· 生ワクチン:1回接種


5. 副反応

組み換えワクチン: 接種部位の痛み・腫れ、発熱、倦怠感


生ワクチン: 接種部位の腫れ、軽度の発熱


組み換えワクチンは副反応がやや強めですが、その分予防効果も高くなります。


6. 費用(当院の場合)


組み換えワクチン

2,2000円/回

助成後の負担金(さいたま市)18,200円/回

※2回接種の組み換えワクチンは合計44,000円(助成後36,400円)


生ワクチン

8,000円/回

助成後の負担金(さいたま市) 5,000円/回

 

7. 2025年4月から助成制度がスタートします。

さいたま市在住で以下のいずれかに該当する方が対象です。

· 定期接種対象

65・70・75・80・85・90・95・100歳の方 100歳以上の方 60~65歳未満の免疫不全の方

· 市独自助成対象 50歳以上の方(上記以外)


参照

さいたま市 令和7年度帯状疱疹ワクチン予防接種のご案内

https://www.city.saitama.lg.jp/002/001/014/006/002/p118277.html


※他の自治体は要確認 お住まいの市区町村の公式サイトをご覧ください。


8. 当院で接種できます

なかじまクリニック和では、組み換えワクチン・生ワクチンの両方を取り扱っています。 助成制度も利用可能ですので、お気軽にご相談ください。

《ご予約方法》

お電話または受付にて承ります。 → TEL: 048-829-7729


帯状疱疹は「予防」が最も重要です。 この機会にワクチン接種をご検討ください。

 

 

参考文献 1) Lal H. et al.: N Engl J Med. 372(22), 2087-2096, 2015

2) Cunningham AL. et al.: N Engl J Med. 375(11), 1019-1032, 2016

3) Baxter R. et al.: Am J Epidemiol. 187(1), 161-169, 2018

4) Izurieta HS. et al.: Clin Infect Dis. 64(6), 785-793, 2017

5) Strezova A. et al.: Open Forum Infect Dis. 9(10) Oct 2022; ofac485


#なかじまクリニック和 #帯状疱疹ワクチン #組み換えワクチン

投稿者: なかじまクリニック

2025.03.24更新

 年を重ねると人は老化し、それは肌にも表れます。

通常の老化では、シワがみられ、たるみができてきます。それとは別に太陽光によってもたらされる肌の老化(光老化)があります。

 光、特に紫外線が子どものころから繰り返し長時間にわたってあたることで、成人になって肌に変化が表れます。皮膚の色が薄茶色になり、しみが増えます。

ざらつきがでて乾燥し、厚く硬くなってごわごわします。張りがなくなって、シワやたるみが増え、深くなります。イボや皮膚ガンの原因にもなります。

 光老化はいつからでも、今からでも予防ができます。日傘、帽子、長袖、長ズボンの使用のほか、日があたる顔、首、手には日焼け止めの使用が有効です。

 

ノブ UVミルクEX      2200円 (お湯で落とせます)

ノブ Ⅲ バリアクリームUV 4400円 (花粉などの外部刺激から肌を守る・肌荒れ予防の日焼け止め。石鹸でおとせ化粧下地にも良い)

JMEC UVローション    3080円 (ウォータープルーフ。保湿・エイジングケア。化粧下地に使える)

 

投稿者: なかじまクリニック

2025.03.23更新

 なかじまクリニック和では成人の方に予防接種を行っております。ワクチンで病気を予防しましょう。

 妊娠を考えている方とその家族、子どもと接する機会の多い職場の方は麻疹・風疹・おたふく・水疱瘡の抗体が十分ついているか確認し、必要に応じてワクチン接種を行うとよいでしょう。職業によっては抗体の確認とワクチン接種が必要となります。

 また高齢者むけには肺炎球菌ワクチン、RSウイルスワクチン、帯状疱疹ワクチンがあります。重症化のリスクを下げるために必要なワクチン接種を行いましょう。

 心配なことや、抗体をもっているかどうか検査をされたいなありましたら、診察を受け付けております。

麻疹・風疹・おたふく・水疱瘡・B型肝炎については先に別途抗体検査が必要です。抗体をもっていればワクチンを接種する必要はありません

 帯状疱疹ワクチン 22000円

 肺炎球菌ワクチン 8000円

 RSウイルスワクチン 26000円

 コロナワクチン(ファイザー) 15000円

 MR(麻疹・風疹混合) 10000円

 おたふくワクチン   6500円

 みずぼうそうワクチン 8000円

 B型肝炎ワクチン 6000円

投稿者: なかじまクリニック

2025.03.19更新

 4月から母校の昭和大学から内分泌内科の志村浩平先生が診療にあたります。

9時30分から12時30分の受付となります。

健康診断もできます。生活習慣病(糖尿病・高血圧・高脂血症)についてとても詳しいです。

内科の診察時間は平日は9時30分から13時までですが、土曜日は30分短いので受付時間に気を付けてください。

 

投稿者: なかじまクリニック

2025.03.16更新

 入社時、入学時の健康診断を行っております。

基本セット8000円

(内科診察・身長・体重・腹囲・BMI・血圧・視力検査・聴力検査・尿検査・胸部レントゲン)

 

追加の検査(別途料金が発生)

 心電図検査1500円

 色覚検査 500円

 血液検査① 貧血・肝機能・脂質・血統 3000円

     ② HbA1C(糖尿病)     500円

     ③ HBs抗体(B型肝炎)   1500円

     ④ 血液型ABO RH     2200円

 そのほか項目はご相談ください。

 事前の電話にてご予約お願いします。

 

 

投稿者: なかじまクリニック

2025.03.12更新

2025年4月から昭和大学内科学講座の協力のもと土曜日の診察を開始いたします。

受付時間は9時30分から12時30分となります。

平日受診することができない方が多い中少しでもお役に立てれば幸いです。

投稿者: なかじまクリニック

2025.03.08更新

健康診断で「高血圧」「糖尿病」「高脂血症」などを指摘されたものの、 「自覚症状がないから大丈夫」 と思っていませんか? しかし、これらの生活習慣病は 静かに進行し、気づいたときには深刻な病気を引き起こす 可能性があります。


今回は、なぜ放置してはいけないのか、そしてどうすれば健康を取り戻せるのかをお伝えします。

 

症状がなくても進行する生活習慣病の怖さ


生活習慣病は 「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」 とも呼ばれます。なぜなら、多くの人は 症状がないまま病気が進行 し、 ある日突然、脳卒中や心筋梗塞を発症 することがあるからです。

• 高血圧 → 動脈硬化が進み、脳卒中・心臓病のリスク増加

• 糖尿病 → 進行すると目・腎臓・神経に障害を引き起こし、失明や腎不全の原因に

• 高脂血症(脂質異常症) → 血管が詰まりやすくなり、狭心症や心筋梗塞の原因に


「症状がない=健康」ではありません。 今のうちに対策をすることで、将来のリスクを減らせます。

 

まずは生活習慣の見直しから


健康診断で指摘されたら、まずは 食事や運動などの生活習慣を改善 することが重要です。


✅ 食事のポイント

• 塩分を控えめに(1日6g未満が理想)

• 糖質の摂りすぎに注意(白米やパンの量を適量に)

• 揚げ物や脂質の多い食品を控える

• 野菜・魚・大豆製品を積極的に摂る


✅ 運動のポイント

• 1日30分のウォーキングや軽い運動を習慣に

• 階段を使う、歩く機会を増やす

• 週2〜3回の筋トレで基礎代謝をアップ


生活習慣の改善だけでは不十分な場合は?


生活習慣の見直しだけで改善しない場合は お薬による治療 を開始することがあります。

• 高血圧の薬 → 血圧を安定させ、脳卒中や心臓病のリスクを下げる

• 糖尿病の薬 → 血糖値をコントロールし、合併症を予防

• 脂質異常症の薬 → コレステロールを下げ、血管の詰まりを防ぐ


「一度薬を飲み始めたら、一生やめられないのでは?」 と不安になる方も多いですが、 生活習慣の改善によって薬の量を減らしたり、服用をやめられる場合もあります。

 

まずはクリニックで相談を!


健康診断の結果で気になる数値があったら、 早めにクリニックを受診しましょう。

• 「まだ大丈夫」と思っているうちに病気は進行します。

• 今のうちに生活習慣を改善し、必要なら適切な治療を受けることが大切です。


健康は 「今すぐの対策」 で守ることができます。まずは気軽にご相談ください。

投稿者: なかじまクリニック

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